「バイクに乗るときに、どんな体勢が正しいの?」「もっとカッコよく乗りこなしたい!」そんな悩みをお持ちのあなたへ。この記事では、本物の教習指導員が教える、バイクの正しい運転姿勢を7つのポイントでわかりやすく解説します。安全運転はもちろん、運転技術の向上にもつながる、理想のライディングフォームを手に入れましょう。
初心者だけでなくバイクに慣れてきた人にも、オートバイを運転していて「何となくしっくりこない」「妙に疲れる」「微妙に思ったラインと違うところを走行してしまう」などと感じたことはあると思います。
実は、それらに大きくかかわっているのは運転姿勢が原因かもしれません。
安全に、ストレスなくオートバイを操るためには、基本を押さえた正しい運転姿勢が大切です。
正しい運転姿勢は、安全運転につながるだけでなく、運転技術の向上にも大いに関係します。
ロングツーリングでは、疲労を最小限に抑えられます。
そして何よりも、正しい運転姿勢は、はたから見ていると「カッコよい」のです。
皆が知っているようなアスリートやアーティストなどは、そもそも、そのプレースタイルや立ち振る舞いを見ているだけで「格好良い!」と思いますよね。
私は、オートバイの運転もそれと同じだと思っています。
一般的に、オートバイの正しい運転姿勢の基本には、「7つのポイント」と言われるものがあります。
自動車学校で教わる運転姿勢も同じなので、覚えておくと良いでしょう。
運転姿勢の基本「7つのポイント」とは、以下の7つになります。
- 目 視界は広く、遠く。
- かた 力を抜いてリラックス。
- ひじ 力を抜いて、軽く曲がる程度に。
- 手 自然にハンドルグリップを握った状態。
- こし 着座位置が、ハンドルから「遠すぎず、近すぎず」。
- ひざ 両ひざで、しっかりとタンクを挟みます。
- 足 「土踏まず」でステップを踏み、つま先は真っすぐ前へ。
自動車学校で手にする「運転教本」にも載っています。
事前に、しっかりと確認しておいてください。
では、教習指導員歴20年以上の私からの目線で、運転姿勢についての「補足説明」をしていきます。
①目 視界は広く、遠く。
視界は広く、遠くに越したことはありませんが、自動車学校のコースで練習していると、ついつい「狭く、近く」になってしまうのが、目線です。
通常の一般コース(法規走行)でも、目線が下がり、路面を見てしまいます。せめて「自転車に乗っているとき」よりは、前を見れるようになりたいものです。
さらに、一本橋やクランクなどの狭路を走行中は、一点を注視しがちです。
オートバイはバランスで乗るので、見ているところに向かってしまいます。
「だって怖いから、そこに目が行ってしまう」という人へ。
怖いと思っているところに目線が向いてしまうのは、生物であれば当然のことです。
そして、オートバイは「見ているところに向かって行ってしまいます」。
そんなときは、「顔を進行方向に向ける」ことを意識してください。
強制的に、目線を進行方向に向けると思ってください。
顔を行きたい方向に向けることによって、進行方向に対しての視界も広くなります。
特に、交差点などでは、広い視界が安全運転につながります。
オートバイの運転に慣れてきたら、「軽くあごをひいて」、上目遣いに前方が見れるようになると、いわゆる「カッコよい運転姿勢」に近づけます。
「顔を進行方向に向ける」と「軽くあごをひいて」は、②かたにも良い影響が出て、自然に曲がれるようになります。
②かた 力を抜いてリラックス。
確かに、かたの力を抜いてリラックスしたほうが、オートバイを運転するには良いです。
しかし、慣れていなかったら、怖いと思っていたら、かたの力を抜くなんて無理ですよね。
でも、あえて言います。
「かたの力は抜いたほうが良いです」。
かたの力を抜くためには、①目線、⑤こし(座る位置)、⑥ひざ(ニーグリップ)がポイントになってきます。
目線(顔)を進行方向に向けることにより、かたも進行方向に向きやすくなります。
そうすると、行きたい方向にハンドルが向きやすくなります。
結果、スムーズに曲がりやすくなります。
こし(座る位置)が遠いと、ひじが突っ張ってしまい、かたの動きに連動したハンドル操作が出来なくなります。
そして、ひざ(ニーグリップ)でしっかりと、身体を支えていないと、腕で身体を支えることになり、かたにも力が入ります。
これは私だけの話かもしれませんが、どうしても肩に力が入ってしまう時は、腹筋をキュッと締める意識を持つと、意外と肩の力が抜けますよ。
あくまでも、「私の場合は」ということですが、気になった人は試してみてくださいね。
③ひじ 力を抜いて、軽く曲がる程度に。
②かたの力が抜けてきたら、ひじの力も抜けるようになります。
座る位置を意識して(⑤こし)、自然にハンドルグリップに手を伸ばしたら(④手)、「かた」と「ひじ」の力を、すっと抜いてみます。
ひじが、重力に負けて、軽く下がるのが分かります。
その状態が、理想的な「ひじの角度」となります。
これも、私独自のやり方なので、他の人にも合うかどうかわかりませんが、両手の人差し指をグリップから少し浮かすイメージを持つと、自然とひじの力が抜けます。
あくまでも、「私の場合は」ということですが、気になった人は試してみてくださいね。
④手 自然にハンドルグリップを握った状態。
⑤こし(座る位置)と、③ひじを意識した状態で、自然に腕を前にのばして、ハンドルグリップを軽く握ってみてください。
イメージとしては、手のひらでハンドルグリップを後ろから前へ、軽く押している状態がベストです。
決して、ハンドルグリップを上から握りこんだり、がっしりと力を込めて握らないことです。
指の力を抜くと、自然と指がハンドルグリップに沿って巻き付いている感触です。
私の場合は、意識的に人差し指の力を抜くと良い感じになります。
また、初心者の場合は、ハンドルグリップの真ん中を持つようにすると良いでしょう。
グリップの外側いっぱいだったり、内側いっぱいを持たないように意識してみてください。
⑤こし 着座位置が、ハンドルから「遠すぎず、近すぎず」。
自動車学校の説明や、運転教本などでは「オートバイのセンタースタンドを立ててオートバイにまたがり、ステップを正しく踏んで真っすぐに立ち上がった状態から、腰を真下におろした状態が、理想の着座位置」とされています。
確かにその通りです。私も教習ではそのように教えています。
ただ、アメリカンバイクや、レーサーレプリカなどを購入した人にとっては、これでは困ります。
なので、「軽くあごをひいて、前方が見られるように」し、「かたの力が抜けた状態」で、「ひじが自然に曲がっている位置」に座るようにしましょう。
正直な話、腕や脚の長さによって、適切な着座位置は人によって変わりますので、自分に合った位置に座れるようにしましょう。
ひじが伸び切らないように座るのが、一番のポイントです。
自動車学校の技能教習では、両足のつま先をペダルの上に維持するのが辛いからと、わざと着座位置を後方にずらして運転する教習生もいます。
そのような運転姿勢を取ると、両腕が伸び切ってしまい、思うような運転操作が出来なかったりします。重心も後ろ方向に移動してしまいますので、加速時にふらついたり、減速時にふらついたりします。
着座する位置は正しい位置に座りましょう。
ペダルが辛い人は、スネの筋肉を鍛えてくださいね。
⑥ひざ 両ひざで、しっかりとタンクを挟みます。
私が考える「オートバイの運転姿勢で最も大切なポイント」です。
いわゆる「ニーグリップ」です。
両ひざでタンクをはさみ、ひざでしっかりと身体を支えてください。
そうすることによって初めて、「かた」や「ひじ」の力を抜くことが可能となります。
ニーグリップがしっかりできていない場合、ハンドルをしっかり握らないと身体を支える場所がなくなります。その結果、スムーズな運転操作が出きず、バランスも崩しやすくなります。
両ひざでしっかりとタンクを挟んでください。
ひざで身体を支えるのです。
ニーグリップで、オートバイと一体化するのです。
⑦足 「土踏まず」でステップを踏み、つま先は真っすぐ前へ。
「ニーグリップが出来ない」、「ニーグリップが弱い」人は、100%と言っても良いくらいに、ステップの踏み方に問題があります。
まずは、土踏まずでステップを踏んでください。
これが基本です。
土踏まずよりも前でステップを踏むと、リアブレーキやギアチェンジの操作が出来ません。操作の度にステップを踏みなおすことになります。
ステップを踏みなおすたびに、バランスを崩します。
土踏まずよりも後ろでステップを踏むと、荷重が前にかかったときに、リアブレーキを踏んでしまったり、ギアペダルを踏んでしまったりすることになります。
急制動で、想定以上にリアブレーキを踏んでしまい、リアタイヤをロックさせてしまったり、スラロムなどで不意にニュートラルになってしまうのは、そのためです。
靴底やステップが濡れていると、ステップ自体を踏み外すこともあります。
土踏まずでステップを踏むようにしましょう。
「土踏まずでステップを踏む」以外で、とても大切なことがあります。
ニーグリップが出来ていない人は
「つま先が外を向いている」
か
「かかとがオートバイから離れたところを踏んでいる」
のです。
私は、教習生の運転姿勢の状態に応じて表現を使い分けてはいますが、「つま先グリップ」や「かかとグリップ」を意識するように指導しています。
つま先が外を向いていたり、かかとが車体から離れてステップの外側を踏んでいたりするようでは、ニーグリップが出来るはずがありません。
人間の骨格上、無理だと信じています。
「つま先グリップ」では、両足の親指の付け根でエンジンを挟むイメージ。
「かかとグリップ」では、かかとでフレームを挟むイメージ。
ニーグリップが出来ないという人は、試してみる価値はあると思いますよ。
まとめ
以上、運転姿勢の7つのポイントを、長年、自動車学校で教習をして来た私なりの解釈で説明してきました。
本当は、実際に運転を見せてもらってから、個々の運転に合わせたアドバイスをしたいところではありますが、私の表現力からすると、文字でお伝えするのはこれで精いっぱいです。
少しでも、皆さんの運転のお役に立てればよいです。
気が付いてもらえたと思いますが、7つのポイントは、どれか一つが出来ていない。とか、どれか一つは出来ている。ということは少ないです。
それぞれ7つのポイント同士が、影響しあっています。
どこか一か所が出来ていないことにより、7つのポイントの全てに影響が出てきます。
私が言えることは
「姿勢はとても大切」
「下半身が安定していないと、スムーズな動きが出来ないのは、スポーツと同じ」
ということです。
正しい運転姿勢は「格好良い運転姿勢」にもつながります。
ぜひ参考にしてみてください。