「バイクに乗るときに、どんな姿勢が正しいの?」「もっとカッコよく乗りこなしたい!」そんな悩みをお持ちのあなた。この記事では元教習指導員が教えるバイクの正しい運転姿勢を7つのポイントで解説します。安全運転はもちろん、運転技術の向上にもつながる、理想のライディングを手に入れましょう。
オートバイを運転していて「何となくしっくりこない」「妙に疲れる」「微妙に思ったラインと違うところを走行してしまう」などと感じたことはあると思います。
初心者ライダーだけでなく、ベテランライダーも同じことを思ったことはあるはず。
いったい何が良くないのでしょうか?
私は、やはり基本は運転姿勢にあると思います。
原因のほとんどは運転姿勢
私の経験上、ほとんどの場合その原因は運転姿勢にあります。
安全にストレスなくオートバイを操るためには、基本を押さえた正しい運転姿勢が大切です。
正しい運転姿勢は、安全運転につながるだけでなく運転技術の向上にも大いに関係します。
そしてロングツーリングでは疲労を最小限に抑えられる!
これは私も実感しています。

正しい運転姿勢は、はたから見ているとカッコ良い
- トップアスリート
- 世界的モデル
- 大物俳優
- 一流ミュージシャン
- 伝統芸能などの師範
誰もが知っているようなトップアスリートや超一流アーティストなどは、そのプレー中のスタイルや立ち振る舞いや所作を見ているだけでカッコ良いですよね。
私はクルマやオートバイの運転もそれと同じだと思っています。
- 運転姿勢が良い人は運転が上手い
- 運転が上手い人は見ているだけでカッコよい
決して「運転が上手いからカッコよい」のではないです。
そして「速いからカッコよい」のでもないです。
写真を見たらわかる
例えば、走行中の写真を見た時。
写真を見ただけでは「運転が上手いのかどうか」分からないはずですよね?
でも写真を見ただけで「この人は運転が上手そうだ」と感じます。分かります。
カラオケを楽しんでいる人たちの写真を見ても同じです。

知らない人がカラオケで歌っている写真を見て、何となく「この人は歌が上手そう」とか「この人の歌は聴きたくない」などと感じたりしませんか。
では、なぜ写真を見ただけで、そう感じるのでしょうか。。。
教習指導員歴25年の私目線で考えてみます
教習指導員としての私の目線で解説したいと思います。
ちょっと変わった目線に感じることがあるかもしれませんが、参考になれば幸いです。
この記事が酒の肴にでもなれば幸いです。。


運転姿勢「7つのポイント」
オートバイの正しい運転姿勢の基本には「7つのポイント」と言われるものがあります。
自動車学校で手にする「運転教本」にも載っていますので、免許を持っている人の中にはおぼえている人もいるでしょう。。
自動車学校で教わる基本的な運転姿勢は以下の通り。
- 目
- かた
- ひじ
- 手
- こし
- ひざ
- 足
もちろん、これから教習を受ける人は技能教習の初めの段階で説明されますが、事前にしっかりと確認しておいてください。
ではそれぞれの項目で私目線での「補足説明」をしていきます。
目
視界は「広く」「遠く」

視界は「広く」「遠く」に越したことはありません。
自動車学校のコースで練習していると、ついつい「狭く、近く」になってしまいます。通常の一般コース(法規走行)でも、目線が下がり路面を見てしまいます。これはクルマの運転でもオートバイの運転でも同じくおちいりがちなポイントです。
せめて「自転車に乗っているとき」よりは先を見られるようになりたいもの。
さらに一本橋やクランクなど狭路では一点を注視しがち。
特にオートバイはバランスで乗ります。見ているところに向かってしまいます。
「だって怖いから、そこに目が行ってしまう」という人へ。
怖いと思っているところに目線が向いてしまうのは、生物であれば当然のことです。
しかし、そうも言ってられません。次のことを意識してみましょう。
進行方向に「顔」を向ける

目線を先に向けられない人は「顔を進行方向に向ける」ことを意識してください。
目線だけで進行方向を見ようとすると、上手くいきません。
上記した様に、怖いと思っているところに目線が向いてしまうので「中央線」「対向車」「ガードレール」「路面の石」にオートバイが向かってしまいます。
顔を向けないと運転姿勢も固まってしまうので、思ったような走行ラインに乗れません。
そうならないように強制的に目線を進行方向に向けるのです。
顔が進行方向を向くことにより、かたも進行方向を向きやすくなります。
かたが進行方向を向けば、行きたい方向にハンドルが向きやすくなります。
また、顔を行きたい方向に向けることによって進行方向に対しての視界が広くなります。
交差点やカーブなどで視界が広いことは安全運転に直結します。
進行方向に顔を向けるのはメリットしかありません。
フロントタイヤが通って欲しい場所!
目線を進行方向に向けるのは分かった。
しかし、具体的には進行方向のどこを見ればよいのか。。。
具体的には出来るだけ遠くの「フロントタイヤが通って欲しい場所」を見てください。
自分の中でフロントタイヤが通って欲しい場所を明確にイメージするのです!
フロントタイヤを「ここに通す!」と決めてください。
- 直線にいるのなら「次のカーブの入り口」のフロントタイヤを通したい場所。
- 一本橋なら「一本橋の出口」。
- スラロームやクランクなど狭路では次の目標位置
そして目標場所が自分の視界の中心に来るようにつとめてください!
まちがいなく「バランスがとりやすくなります」。
※逆に、対向車や中央線、パイロンやガードレールを見ていると、そこに吸い込まれるように向かってしまいますよ。
カッコ良い運転姿勢とは
オートバイの運転に慣れてきたら「軽くあごをひいて」上目遣いに前方が見れるようになると「カッコよい運転姿勢」に近づけます。
「顔を進行方向に向ける」と「軽くあごをひいて」は「肩も進行方向を向きます」ので、良い影響が出て自然に曲がれるようになりますよ。
かた
力を抜いてリラックス

確かに、かたの力を抜いてリラックスしたほうがオートバイを運転するには良いです。
でも「慣れていなかったら」「怖いと思っていたら」かたの力を抜くなんて無理。。。
でも、あえて言います。
「かたの力は抜いたほうが良い」
かたに力が入るのは「腕に力が入っている」からです。
ハンドルにしがみつかない
腕に力が入っているのは「ハンドルで身体を支えてしまっているから」!
腕に力が入ると、ひざにチカラが入らない!
ひざにチカラが入らないと「ニーグリップ」が弱くなります。
後述しますが、ニーグリップでしっかりと身体を支えていないと腕で身体を支えることになり、かたにも力が入ります。
これは悪循環!
これは私だけの話かもしれませんが、どうしても肩に力が入ってしまう時は座る位置を出来るだけ前よりにして「腹筋をキュッと締める」意識を持つと、意外と肩の力が抜けます。
「私の場合は」ということですが、試す価値はありますよ。
カッコ良い運転姿勢とは
スタンドを立てた状態で構わないので、自分に合った着座位置に座ってみます。
そしてそっとハンドルに手を伸ばしてグリップを軽く握ったら。
ゆっくり息を吸い込んだ後、ふぅっと息を吐きながら上体の力を抜きます。
「脱力」するのです。
それでほとんどの人が「自分に合った運転姿勢」になるはず。
※自宅でも脱力してくださいね↓


ひじ
力を抜いて、ひじが軽く曲がる程度

かたの力が抜けてきたら、ひじの力も抜けるようになります。
停止した状態で、座る位置を意識して自然にハンドルグリップに手を伸ばしたら、「かた」と「ひじ」の力をすっと抜いてみます。
ひじが重力に負けて少し下がるのが分かりますか?
その状態が、理想的な「ひじの角度」となります。
カッコ良い運転姿勢とは
ここでは少しだけ「よく見かけるカッコよくない運転姿勢」に触れます。
教習中によく見るのは「ひじを妙に内側に入れてしまっている」人です。
おそらくは指導員に「ひじのチカラを抜いて―」と言われているのでしょうが、意識しすぎてひじが内側に。その結果、肩に力が入ってアゴが前に出てしまいます。
一般道でよく見るのは、ひじを妙に張ってしまっている人です。
不自然にひじが外に出ています。
肩というか首にチカラが入ってしまいます。
上手くひじの力を抜くためには上体の力を抜くことが重要なんですが、次の「手」がとても大切なポイントになります。
手
自然にハンドルグリップを握った状態

座る位置とひじの角度を意識して、自然に腕を前にのばしてハンドルグリップを軽く握ってみます。
グリップを握る位置としては、グリップの真ん中を持つようにします。
グリップの内側になったり、外側いっぱいを握らないでください。
ちょうど真ん中あたりに手のひらを持っていきましょう。
ハンドルグリップを握ると言っても、本当に握ってしまってはダメですよ。握るとチカラが入ってしまいますから。
イメージとしては手のひらでハンドルグリップを後ろから前へ軽く押している状態がベスト。
その状態で指の力を抜くと、指がハンドルグリップに沿って自然に巻き付いている感触です。
ポイントは「ハンドルグリップを上から握りこんだり、がっしりと力を込めて握らない」こと。
- グリップを手のひらで後ろからへ軽く押す
- 自然に指がグリップに巻き付く
カッコ良い運転姿勢とは
これも私独自のやり方なので他の人にも合うかどうかわかりませんが「両手の人差し指をグリップから少し浮かすイメージ」を持つと自然とひじの力が抜けます。
両手が怖いのなら、どちらか片方の手の人差し指でも良いです。
それでも全然効果あります。
私の場合
- 指導員時代に場内コースでガッチガチの練習をしていた時
- プラーベートでツーリングしてて気合が入っちゃった時
「上手く乗れていない!!」と感じた時は手にチカラが入っています。
グリップを握ってしまっているのが自分で分かります。
そんな時は、意識的に人差し指の力を抜くと良い感じになります。
気になった人は試してみてください。


こし
着座位置がハンドルから「近すぎず遠すぎず」

自動車学校の説明や運転教本などでは
「オートバイのセンタースタンドを立ててオートバイにまたがり、ステップを正しく踏んで真っすぐに立ち上がった状態から、腰を真下におろした状態が理想の着座位置」
とされています。
確かにその通りです。私も教習ではそのように教えています。
しかしアメリカンクルーザー、レーサーレプリカなどを購入した人にとって、これでは困ります。
どんな車種でも大切なのは以下の通り。
- 軽くあごをひいて前方が見られる
- かたの力が抜けた状態
- ひじが自然に曲がっている位置
これが大切です!
腕の力を抜くためには目線、こし(座る位置)、ひざ(ニーグリップ)がポイント。
こしがハンドルから遠いと、ひじが突っ張ってしまいます。
ひじ」が突っ張ることによって、アクセルやブレーキの操作がスムーズに出来なくなります。
正直な話、腕や脚の長さによって適切な着座位置は人によって変わります。自分に合った位置に座れるようにしましょう。
カッコ良い運転姿勢とは
経験の浅いライダーの着座位置は後ろ気味になりがちです。
基本的な運転姿勢として、両足のつま先はペダルの上に位置させておかないといけません。
ペダルの下につま先を入れたまま走行したり、つま先を外側に向けて運転してはいけないのですね。
自動車学校の技能教習では、両足のつま先をペダルの上に維持するのが辛いからと、わざと着座位置を後方にずらして運転する教習生もいます。
でもそれでは座る位置は後ろ過ぎることが多いです。
ひじが伸び切らないように座るのが一番のポイント。
そのような運転姿勢を取ると両腕が伸び切ってしまい、思うような運転操作が出来ません。
重心も後ろ方向に移動してしまいますので、加速時、減速時に不安定。
着座する位置は正しい位置に座りましょう。
もし座る位置が微妙に分からずに迷ったときは「前気味」を選択すると良いでしょう。
ペダルの上につま先をキープするのが辛い人は、スネの筋肉を鍛えてください!
けが防止のためにも大切なことです。

ひざ
両ひざで、しっかりとタンクを挟む

私が考える「オートバイの運転姿勢で最も大切なポイント」です。
いわゆる「ニーグリップ」。
両ひざでタンクをはさみ、ひざでしっかりと身体を支えてください。
そうすることによって、初めて「かた」や「ひじ」の力を抜くことが可能となります。
ニーグリップがしっかりできていない場合、ハンドルをしっかり握らないと身体を支える場所がなくなります。スムーズな運転操作が出きず、バランスも崩しやすくなります。両ひざでしっかりとタンクを挟んでください。ひざで身体を支えて上半身を自由にするのです。
ニーグリップをすることで身体とオートバイ全体の重心も下がります(と思います)。
結果、安定した挙動が生まれるのですね。
ニーグリップで、オートバイと一体化するのです。
カッコ良い運転姿勢とは
ニーグリップをしっかりしましょう!
ただ、ずっとニーグリップしてたら疲れます。
すぐに疲れます。
他の人が見たら「ちゃんとニーグリップをしているような姿勢」を保つことが大切です。
いざという時には、その姿勢のまま「キュッとニーグリップ」すれば良いのです。
足
土踏まずでステップを踏み、つま先は真っすぐ前

「ニーグリップが出来ない」
「ニーグリップが弱い」
これらの人は100%と言っても良いくらいに100%、ステップの踏み方に問題があります。
土踏まずでステップを踏む。まずはこれが基本。
土踏まずよりも前でステップを踏むとリアブレーキやギアチェンジの操作が出来ない
前よりにステップを踏むと足で運転操作ができなくなります。
操作の度にステップを踏みなおすことになります。ステップを踏みなおすたびにバランスが崩れます。操作するたびにふらつくのです。
土踏まずよりも後ろでステップを踏むと体重が前に
以下の失敗はステップを踏む位置が問題で発生します。
- 無意識にリアブレーキを踏んでしまった
- ギアペダルを踏んでしまった
- 急制動で想定以上にリアブレーキを踏んでリアタイヤをロックさせてしまう
- スラロームなどで不意にニュートラルになってしまう
- 靴底やステップが濡れていてステップを踏み外した
土踏まずのひっかかりを上手く利用して、ステップを踏むようにしましょう。
ステップを踏む足とオートバイをくっつける
「土踏まずでステップを踏む」以外で、とても大切なことがあります。
ニーグリップが出来ていない人は「つま先が外を向いている」か「かかとがオートバイから離れたところを踏んでいる」のです。
つま先が外を向いていたり、かかとが車体から離れてステップの外側を踏んでいたりするようでは、ニーグリップが出来るはずがありません。人の骨格上、無理でしょう。
ステップの最も内側を踏む
まずは出来るだけステップの内側を踏むように意識してください。
「くるぶし」でオートバイのフレームを挟んでしまうと良いのです。
私は、教習生の運転姿勢の状態に応じて表現を使い分けてはいますが、「くるぶしグリップ」のほかに「つま先グリップ」や「かかとグリップ」と言葉を変えて本人に分かるように意識させて指導しています(いました)。
「つま先グリップ」では、両足の親指の付け根でエンジンを挟むイメージ。
「かかとグリップ」では、両足のかかとでフレームを挟むイメージ。
ニーグリップが苦手という人は、どれかを試してみる価値はあると思いますよ。
カッコ良い運転姿勢とは
教習中というよりは街中をツーリングしているときによく見かけます。
- つま先が外を向いている
- つま先がギアペダルの下に入ったまま
後ろから見ていて「そんなんじゃふらつくに決まってんじゃん」と思います。
交通の流れに合わせてずっと同じスピードで走行中ならまだ分かります。
疲れてを感じてきたり、退屈だったり、少し姿勢を変えたくなったり。
しかし、発進して速度が安定する前にこんな運転姿勢ではいけません。
発進時は、停止時の次に不安定になりやすいタイミングです。
常につま先は前に向け、ギアチェンジが終わるたびにギアペダルの上に持ってくるようにしましょう。
絶対にカッコ良く見えますよ!
しかも、ふらつきません!
まとめ
運転姿勢の7つのポイントを、長年自動車学校で教習をして来た私なりの解釈で説明してきました。
本当は、実際に運転を見せてもらってから、個々の運転に合わせたアドバイスをしたいところではありますが、私の表現力からすると文字でお伝えするのはこれで精いっぱいです。
少しでも皆さんの運転のお役に立てればよいです。
- 目 視界は広く、遠く。
- かた 力を抜いてリラックス。
- ひじ 力を抜いて、軽く曲がる程度に。
- 手 自然にハンドルグリップを握った状態。
- こし 着座位置が、ハンドルから「遠すぎず、近すぎず」。
- ひざ 両ひざで、しっかりとタンクを挟みます。
- 足 「土踏まず」でステップを踏み、つま先は真っすぐ前へ。
気が付いてもらえたと思いますが「7つのポイント」は、どれか1つが出来ていない。とか、どれか1つは出来ている。ということはないです。
それぞれ7つのポイント同士が影響しあっています。
どこか1か所が出来ていないことにより、7つのポイントの全てに影響が出てきます。
私が言えることは「姿勢はとても大切」「下半身が安定していないと、スムーズな動きが出来ないのは、スポーツと同じ」ということです。
正しい運転姿勢は「格好良い運転姿勢」にもつながります。
ぜひ参考にしてみてください。

我ながら良い写真だと思います。 ↑
良い運転姿勢です。
若かりし頃です。

