自動車学校に通っていると、卒業検定が近い他の教習生の練習を見ることもあると思います。
彼らが速いスピードで走ってきて、急に「ぎゅー――っ」と止まる練習をしているのを見て「うわぁ、こわそー」とか「むつかしそうだなぁ」とか、思ったのではないでしょうか。
なかには転倒しているのを見て、びびってしまう人もいるでしょう。
二輪車特有のブレーキ操作のポイントや、陥りがちな間違い、そして安全な停止方法のための心構えまで、バイクの急制動について初心者から経験者まで役立つ情報を教習指導員の目線で解説します。
急制動の練習はシチュエーションをイメージしやすい
オートバイの教習項目の中で「一本橋」「スラローム」「S字やクランク」のコースなどは、初心者ライダーにとっては「いったい何のための練習なのか」がピンとこなかったりします。
しかし「急制動」はどんなシチュエーションの練習なのか、はっきりとイメージしやすいですね。
イメージ通りに止まれるようにしっかり練習しておきましょう。
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急制動とは
オートバイ免許取得を目指して自動車学校に通う事になると様々な課題がでてきます。
クランク、S字、一本橋、スラロームと違い、急制動は第2段階で習得する課題です。
急制動とは
- 時速40㌔を維持して走行し、
- ブレーキ開始地点からブレーキをかけ
- 決められた地点を越えないように止まれるか
もちろん卒業検定のコースにもあります。
いざという時にはマジで必要な技術!
しっかりと身につけて卒業できるようになりましょう。

急制動を攻略する6つのポイント
急制動に向かう時に覚えておいて欲しいのは以下の6点です。
- 速度の維持
- ブレーキ開始のタイミング
- ブレーキのかけ方
- 前後輪ブレーキのコントロール
- ニーグリップの重要性
- 停止時の考え方
ひとつずつクリアしていきましょう。
速度の維持
急制動ではブレーキをかけ始めて良い地点(制動開始地点)にパイロンが2つ、横に並べて設置してあります。
パイロンの間を通過する時に、時速40㎞/hを維持していなくてはいけません。
ほとんどの自動車学校のコースは、急制動に向かう場合、カーブ等を曲がってからパイロンまでの間に十分な直線距離を取ってあります。
頑張って速い速度でカーブに進入したり、カーブ走行中から極端に加速しなくても大丈夫。
加速は十分に間に合います。
通常のカーブと同様、カーブ脱出時の立ち上がりから車体を起こすために加速を初めてください。
ギアの選択に指定はありませんから、自身が走行しやすいギアでよいです。
それぞれの自動車学校のコース設定や使用車両により変わってきますので、
指導員にアドバイスをもらってください。
セカンドギアかサードギアが一般的な選択肢ですね。
カーブ立ち上がりから自然に加速したら、速度に合わせてギアを1段上げてください。
そのギアのまま、パイロンまで向かうのが良いでしょう。
- 40㎞/h以下だと、条件をクリアしていません。
- 40㎞/h以上だと、むつかしくなります。
40㎞/hぴったりで通過できるように練習してください。
早めに40km/hにする
速度調整のコツは、早めに40㎞/hにすることです。
かといって猛烈に加速する必要はありません。
自然な加速で40㎞/hにもっていきましょう。
スピードメーターの針が40を指してからアクセルグリップを戻すと、スピードが出すぎることが多い。
アクセルグリップを戻してる最中も微妙に加速してるからです。
メーターの針が40に近づいてきたら、速度の上がり方にあわせて少しづつアクセルを戻し、40ぴったりに合わせましょう。
そしてそのままアクセルを微調整、40㎞/hを維持できるようになりましょう。
早めに目標の速度にすることによるメリット
早めに目標速度にすることのメリットは以下の通りです。
速度に目が慣れる
速度に目が慣れると恐怖心が少しだけ和らぎます。
ブレーキ開始地点まで加速し続けると、ずっと目がその速度になれません。
「ちゃんと目標速度にまで間に合うのか」と違う心配まで出てきます。
早目に40km/hにしちゃって「目を40km/hに慣らしてしまう」と良いです。
40㎞/h走行中のエンジン音を聞く
基本的には エンジンの回転数が同じであればエンジン音も同じです。
同じエンジン音を維持すれば、メーターを見ていなくても同じ速度を維持しやすいです。
エンジン音を一定に保ちながら走れるようになれば、あとは前を見て、ブレーキのタイミングをうかがいながら走れます。
速度維持で気を付けてほしい失敗ポイント。
スピードメーターばかりを見てしまう。
上記内容と逆になりますね。
前を見ていないのは危ないです。
メーターが40を示したら、エンジン音で速度を維持できるように練習してください。
加速しなおしてしまう。
これも危ないので気をつけてほしいポイント。
早めに40㎞/hになってしまい、早めにアクセルを戻してしまいます。
徐々にスピードが落ちていきますね。
ブレーキポイント近くになって速度が遅すぎることに気が付き、直前になって加速しなおしてしまいます。
- 加速しなおして「速度出しすぎ」
- 出しすぎて「止まれなかった」
- ブレーキが遅れた
- アクセルグリップを回したままブレーキレバーを握ってしまった
- 慌ててブレーキレバーをガツンと握って転倒
などの失敗例があります。

ブレーキ開始のタイミング
ブレーキ操作を開始するタイミングは、「自身の身体がパイロンを通過」する時だと思ってください。
正確には、「前輪」がパイロンを通過したらブレーキ操作を開始して良いのですが、
ついつい早めにブレーキをかけてしまいます。
あえて「自分の身体」がパイロンを通過したらブレーキ操作をするように心がける。
すると、ちょうど良いタイミングになりますよ。
試してみてください。
ちなみに
パイロンに到達する前からブレーキレバーに指をかけておくこともNG。
ブレーキレバーに指をかけることも「ブレーキ操作」とみられます。
パイロンを超えてからブレーキ操作です。
ブレーキのかけ方
自分の身体がパイロンを通過してから
先にも述べましたが
自身の身体がパイロンを通過したら前後輪同時にブレーキをかけてください。
- 前輪ブレーキだけでもダメ。
- 後輪ブレーキだけでもダメです。
前後輪、それぞれのブレーキにメリットとデメリットがあるのを思い出しましょう。
「ガツンッ」ではなく「じわあぁぁ」っと!
ご存じだとは思いますが、オートバイのタイヤは自転車と同じようにチューブタイプの形をしています。
路面との接地面は小さな円形でしかありません。
しかも二輪車なので、2点でしか接地していません。
その状態でいきなりブレーキをかけると、接地面が摩擦に耐えられないためタイヤがスリップしてしまい転倒につながります。
オートバイに限らずですが、移動している物体が減速状態になると、車両そのものの重量が前に移動します(荷重が前輪にかかる)。
ブレーキ操作でいきなり「ガツン!」とやると、接地面が小さいタイヤが滑る可能性があります。
その対策として「じわぁぁぁ」っとブレーキレバーを握りましょう。
気持ちとしては「もっと強く握っても大丈夫かなあぁ。もっともっと強く握っても大丈夫かなあ」
と怖がりながら、どんどん強く握っていくイメージです。
そうすることにより、オートバイと運転者の重量が少しづつ前輪に乗っていきます。
すると、重量を受け止めた前輪タイヤが路面に押し付けられてつぶれていきます。
前輪タイヤがつぶれることにより、接地面が増す。
接地面が増すことにより、摩擦係数が高くなり、さらに強くブレーキをかけられます。
さらに前輪タイヤに荷重がかかり、接地面がつぶれて接地面が増え、さらに摩擦係数が増えます。
すると、さらに前輪タイヤに荷重がかかり、前輪タイヤが路面に押し付けられて接地面が増え。。。。。
これを繰り返すことにより、どんどん強くブレーキを掛けられるようになります。
結果、安定した、強力な減速が可能となるのです。
ブレーキレバーを「ガツンッ」と握るのではなく「じわぁぁ」っと。
様子を見ながら、どんどん握りこんでいくイメージを持ちましょう。


前後ブレーキのコントロール
バイクのブレーキ操作は、フロント(前輪)ブレーキとリア(後輪)ブレーキと別々に操作する
オートバイなどの二輪車は、なぜ前後ブレーキを別々に操作するようになっているのでしょう。
前後輪ブレーキにはそれぞれに、メリット、デメリットがあるのです。
簡単に表すと次のようになります。
- フロントブレーキのメリット 強力に減速が出来る。
- フロントブレーキのデメリット バランスを失いやすい。前輪がロックしたら転倒。
- リアブレーキのメリット バランスを保ちやすい。後輪がロックしてもバランスは保ちやすい。
- リアブレーキのデメリット 強力な減速は出来ない。
急制動では、前輪ブレーキでの減速がカギです。
強力な減速を期待するとなると、リアブレーキでは無理。
急制動では、ストッピングパワーの強いフロントブレーキで減速してください。
フロントブレーキを強くかけると、運転者を含めた車両全体の重量がフロントタイヤにかかることになり、前につんのめる形となります。
結果としてリアタイヤには荷重はかかりません。
極端な場合は、リアタイヤが地面から浮いてしまうこともあります。
タイヤが地面から浮くと、どんなに軽くブレーキペダルを踏んだとしても簡単にリアタイヤはロックします。
リアタイヤがロックしても簡単にはバランスは崩れません。
そんなに怖がることはないのですが、ロックさせない方が良いに越したことはありません。
- スピードを落とすことは、フロントブレーキにすべて任せる。
- リアブレーキにスピードを落とすことは期待せず、バランスを保つために軽く踏むだけ。
というイメージを持ってください。

ニーグリップの重要性
今さらですが
オートバイの運転姿勢で重要なのはニーグリップです。
運転教本を見ても、雑誌などの記事を見ても、ニーグリップの大切さは必ず出てきます。
では
なぜ、ニーグリップが出来ていないと良くないのでしょうか?
急制動に関してはこう考えてください。
急ブレーキをかけると、荷重がすべて前方にかかります。
ニーグリップが出来ていないと自身の身体を支える場所がなく、ハンドルにしがみつくような格好になります。
ハンドルにしがみつくような格好になるとハンドル操作に影響が出ます。
ハンドルは、身体を支えるためにあるのではありません。
- アクセルを操作し
- ブレーキを使い
- クラッチを握り
- ハンドルを操作して
- 進路、バランスを保つため
身体を支えるためではありません。
前輪タイヤで、進路を微調節しながらバランスを保ちます。
ハンドルでがっちりと身体を支えていたら、取れるバランスもとれなくなります。
急制動では、停止直前にバランスを崩して転倒してしまう方がいます。
そうならないようにしなくてはいけません。
ニーグリップをしっかりするのは、自身の身体をニーグリップでしっかり支え、両腕は微妙なハンドル操作に集中させるためなのです。
停止時の考え方
ブレーキ操作に集中する
急制動とは、「何かあったときに安全に急停止が出来るため」のテクニックです。
安全に停止することに全力を傾けなくてはいけません。
ですから、急制動の停止時にはシフトダウンは必要ないです。
発進の準備をする余裕があるのなら、ブレーキ操作に集中してください。
停止してからローギアに戻せばよいのです。
円滑な発進を心がける場所ではありません。
もちろん、エンストをさせても仕方がないです。
クラッチを握れても、安全ではない停止になってしまうくらいならエンストしても構わないので、安全に停止できることに神経を集中させてください。
停止後の操作
急制動で停止した後は以下の手順で操作してください。
- エンストしていたら、まずはエンジンをかけなおす。
- 落ち着いて、ローギアにする。
- 後方の安全を確認して発進。
これが急制動で停止した後の、通常の発進手順だと持ってください。
ギアはそのままで停止することも、停止時にエンストすることも想定された手順です。
安全に停止するためにも、ブレーキ操作だけに集中しましょう。
急制動は「短く止まれるかコンテスト」をしているわけではありません。
決められた範囲の中で、いかに安定して止まれるかを練習しましょう。
じわあぁっと止まる練習をしてほしいのは、そのためです。
停止の範囲
停止の範囲は路面状況によって違います。
- 晴の日は、2本目の停止線
- 雨の日は、3本目の停止線
決められた線までに止まれるように、徐々に練習しましょう。
初めから線を超えないで止まろうとして転倒してしまうのは怖い。
少しづつ短い距離で停止できるようにして、徐々に停止線で停まれるようになりましょう。
また、短い距離で止まれたからといって何か良いことがあるわけでもないです。
必要以上に短い距離で止まるよりも、安定した姿勢で止まれるように練習しましょう。
まとめ
ブレーキをかける時の気持ちを言葉にするとすると。
「じわぁっとしっかり止まる」
いきなり短く止まるのではなくて「少しずつ、停止距離を短くする」ように練習して
安全に停止できるように、
安定して止まれるように、
練習してください。
路面が濡れているときもあります。
路面に砂利が浮いているときもあります。
マンホールだけが濡れていることも。。。
それぞれの路面状況に影響されない安全な停止が出来るように練習しましょう。
急制動は「何かあったときに安全に停止できるか」
急制動に関係して教習中に意識して練習して欲しい記事について別にまとめました。
興味のある人はこちらの記事もご覧になってください。
↓
また急制動は、卒業検定の時に失敗しやすい課題のひとつでもあります。
卒業検定を受検する時の急制動に対しての心構えなどについて書いた記事もあります。
卒業検定が近づいてきたらそちらの記事も読んでおいてくださいね。
卒業検定の時の急制動の注意点について→ 検定時の急制動はビビります


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